▲鬼のシール
 取材等で東久留米に行き自転車で田無に戻って来る時にいつも気になるものがある。電柱の下の黄色いシールだ。交通安全のためだろうということは分かるが、なぜこの周辺にだけあるのか? 田無警察署の交通課で聞いてみると、以前同署に勤めていた関口茂さんという人が設置したからだという。私は直接ご本人から話を伺うことにした。

 そもそもあのシールは関口さんが練馬警察署時代に、裏通りの交通事故対策として平成7年の春から使い始めたのがきっかけで、あの「鬼の顔」については、少ないシールでインパクトを与えられるようにと考えてはった所、見た人に「これは鬼ですか?」と聞かれたことから、いつしか”鬼のシール“として定着したという。実験的に導入したが効果は絶大で、夜の交通事故処理で忙しすぎて眠れなかったのが途端に減ったというのだ。

 そして3年前、田無警察署に移動になると、このエリアでもシールをはり続けた。所沢街道では、はり終えて1ヶ月後に見に行くといたずらで全部はがされ、また一からやり直すことになったり、作業の最初に電柱の下の埃を雑巾で拭くのだが、その埃を吸い過ぎたため吐血してしまい、4ヶ月間入院するなど様々なことがあったが「一件でも交通事故が減れば」と夢中で続けたそうだ。

▲関口さん
 話を聞いて一番驚いたのが、1万5、000枚以上のシールを全部一人ではったということ。手伝いたいという人もいたが、車の死角になりやすい場所での作業のため、手伝ってくれた人にもしものことがあった時に保証できない。またただはればいいというものではなく、登り坂など道路の状況によって角度を変えるなど試行錯誤を繰り返して得た経験が必要だから、という理由で断ったそうだ。

 平成12年に定年を迎えるまで仕事の合間を見つけては自転車のカゴにシールを入れて、一枚一枚はり続けた関口さんの交通安全への思いが込められた鬼たちは、今も夜の道でドライバーをにらみ続けている。(広)